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これからの小売業に必要なこと ~事業責任者×社外取締役~

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当社グループの店舗事業やEC事業などを統括しているシニアバイスプレジデントの遠藤宗と、当社の社外取締役であり、アースミュージック&エコロジーなどのアパレル事業を手掛ける株式会社ストライプインターナショナルの代表取締役社長兼CEOを務める石川康晴に、当社の取締役兼CFOの菅原敬がインタビューしました。

※当コンテンツは2018年9月に株主の皆様へ送付した定時株主総会招集通知へ掲載したコンテンツを再構成したものです。

お客様に愛されるお店を作るということ

菅原 アイスタイルグループが手掛ける化粧品専門店「@cosme store」の1号店が新宿のルミネエストにオープンしたのは2007年3月です。我々は元々インターネット企業として創業しているのでリアルのお店作りは初めてでしたし、「@cosme」の世界観を反映したお店を作ろうというのが目的だったので当時は結構大変だったと思うのですが、遠藤さんはオープンに当たってどんな点に気を付けましたか?

遠藤 ひとつは「@cosme」で人気の商品を揃えるということです。何が人気なのかというのが店頭で明確にわかるようにしました。もうひとつは、世の中の消費者が化粧品を買う時に抱えていた「もっと自由に試したい」とか、「もっと気軽に相談できたらいいのに」というストレスを解消するように努めました。商品の価格帯によってカウンセリングをしてもらいたいのにできないというような既成概念を外して、ストレスなく購入できる環境をどう作るかということを考えました。その一環で、ほぼすべての商品のテスターを置くということもやっていますね。

菅原 1号店のオープン前日の決起会を今でも覚えてますが、遠藤さんが「お客様に愛されるお店を作ろう」と言っていましたね。そのコンセプトは今でも変わらないですか?

遠藤 変わらないですね。そこはとても大事にしています。

菅原 石川さんが創業したストライプインターナショナルでは、店長やスタッフにどんなことを語りかけていますか?

石川 お客様は、自転車やバス、電車など1時間かけてくる人もいます。暑い中、寒い中わざわざ来て下さっているという感謝を忘れないようにして欲しいと伝えています。それを忘れてしまうと、自分中心の発想になってしまいます。何百ある店舗の中から、うちを選んでいただいたということに感謝しなければいけない。そういうすごくエモーショナルな話をしています。店舗というのは、売上などの数字だけを見ていればいいというわけではなく、そういう部分が必要だと思っています。

遠藤 そうですね。「このお店に歓迎されているのかな?」、「雰囲気がいいな」という感覚はロジカルではないですよね。そういう空気感というのは、人の情緒的なものであり、そういうことをスタッフが意識し配慮することができると、お客様にとても楽しんでいただけるお店になると思います。

石川 接客は作業になりがちです。接客でお客様に対する感謝を意識するということを、経営陣は言い続けなければいけません。そうしないと接客は作業になってしまい、結果的にリピート率が下がり、売上の低下につながります。

菅原 敢えてスタッフには「リピート率を上げるんだ」とは言わずに、「お客様に感謝しよう」と伝えることで、結果としてリピート率が上がるということですね。

世界に先駆けたビジネスモデル

菅原 IT企業が運営する化粧品専門店「@cosme store」のビジネスモデルをご覧になってどんなことを感じましたか?

石川 「@cosme store」は、日本のIT企業の中で、とても先進性があると思っています。Amazonやアリババなどの世界最先端のプラットフォーマーはリアルの店舗に乗り出していますが、アイスタイルは今から10年以上も前にリアルの店舗事業に進出しています。ストライプインターナショナルもこれから取り組もうとしていることがあります。それは、店舗におけるお客様のさまざまな行動データをセンサー等を用いて取得し、それらをECの行動データとつなげて分析することです。おそらく完成するには5年くらいかかると思うのですが、店舗のスタッフの頭の中に入っているお客様の行動データを可視化して、それらを活用した最適なマーケティングをするというのが、私が24年間小売事業を続けてきた中で見つけた次世代の小売事業を作る戦略です。

遠藤 今、アイスタイルでもそういうことをやろうと思っています。さまざまなセンシングテクノロジーが発達しており、お客様の店頭での行動をもう少し把握できるようになると思います。そうなると手に取っただけで買わなかった、サンプルだけ受け取って帰ったというお客様に対して「サンプルはお試しいただけましたでしょうか?このように使用すると効果的ですよ」というようなアプローチを「@cosme」のアプリを通じて行うことも可能になってくると思います。サンプルを貰ったけど、使用していないお客様もいるでしょうし、そういう方にとっては、「じゃあ、試してみよう」というきっかけになるかもしれません。このような取り組みは、ファンの構築にもつながるので、化粧品ブランドにとってもポジティブだと思います。このようにお客様にも化粧品ブランドにもうまく還元していきたいなぁと思っています。

今後さらに小売事業を拡大する上で取り組むべきこと

菅原 遠藤さんは、小売の先輩である石川さんからいろいろなアドバイスをいただいていると思いますが、どんなことを相談していますか?

遠藤 アイスタイルグループは国内にまだ25店舗(2018年7月時点)しかありませんが、この先事業を拡大していく際に立ちはだかる壁がいくつもでてくると思います。それらの壁というのは、石川さんは既に経験されているので、「次にこういうチームを作らないとお店が回らなくなるよね」とか、「西日本で災害があったけど、持続的なビジネスモデルを構築するために、将来的には東西2拠点構想というのも必要になってくるかもしれないね」など、経営者という視点でアドバイスをいただいています。そういうことを伺うと、まだまだやるべきことがあるなぁと気づかされて、勉強になっています。今後も良き先輩、良き兄貴としてアドバイスいただけると本当にうれしいですね。

菅原 今後さらに店舗数も増えていきますし、ECも強化していきます。小売事業の大先輩として、店舗事業が今一番取り組むべきことは何だとお考えでしょうか?

石川 抽象的な表現ですが、組織の近代化ということが必要になってくると思います。100億円規模までは、社長とマネージャーと店長という比較的浪花節的な組織でも到達可能ですが、その先の200億円、1,000億円を見据えるとなると、そういうところが課題になってくると思います。

菅原 人力だけでは回らなくなってくるということでしょうか?

石川 どんどん合理化が必要になってくると思います。例えば、物流倉庫の一番稼働率が低い月を前提に、その部分だけは自動で回せるようにするというような視点も必要だと思います。ECではとても多くの商品を取り扱っていますが、今の物流倉庫はかなり整理されていると思います。ただし、店舗とECの機能の一元化、在庫戦略など、合理化できるポイントはまだあると思いますね。当然、人海戦術が必要なところもあると思います。

遠藤 店舗とECの連携については、既に検討を進めています。どのように連携すれば付加価値を生み出せるのか、効率化・合理化することができるのか、そういった点を意識しながら検討しています。個人的には、店舗とECの運営会社を統合したいと思っています。今は別々の会社なので二重にかかっているコストもあると思います。リスク分散という点と、効率性、お客様に対する付加価値、その3つを意識しながら取り組んでいきたいですね。

石川 社外取締役に就任して1年経ちますが、まだまだ店舗やECでできることがあるなぁと感じています。新宿の1号店が年間15億円の売上実績があり、既に店舗事業の黄金モデルが確立されていると思います。黄金モデルを確立するにはみんな20年くらいかかるんですよね。それが確立できたら、マニュアルに落とし込み、組織の近代化を図り、予算を投下して国内外で拡大路線をとればいいと思います。海外の店舗展開も加速していますが、まだ動きがゆっくりな印象がありますね。また、プラットフォーマーが小売事業を行っているので、もっとECの拡大路線をとった方がいいと思います。アイスタイルは化粧品業界のZOZOさんになれると思っています。

遠藤 高いポテンシャルがありながらECはまだ価値化できていないというのは正直なところです。2019年6月期は、ECの拡大に注力していきます※。早く100億円の規模まで成長させたいと思います。店舗に関しては、トラフィックの高いエリアで、ある程度の面積とある程度の品揃えができて、そこで「@cosme store」の強みを発揮さえすれば、失敗はしないというのがわかってきました。これを黄金モデルと言っていいかわかりませんが、勝ちパターンが見えてきたので、それを広げていきたいと思います。

※2018年12月3日に@cosme公式ECスペシャルイベント「@cosme Beauty Day 2018」を開催しました。詳細はこちら

@cosme storeの海外展開の可能性

菅原 アイスタイルの一番新しいチャレンジは海外の店舗です。2018年7月時点では台湾に4店舗、香港に1店舗オープンしており、今後香港で複数の出店が控えていますし、タイのバンコクにも出店する予定です※。遠藤さん、海外に店舗を出してみて手応えはどうですか?

※2019年2月末時点では、台湾:4店舗、香港:4店舗、タイ:2店舗

遠藤 正直にお話すると、なかなか簡単じゃないなと思いました(笑)。海外の1号店が台湾にオープンしてからまだ1年余りですが、短期的な判断はしないで、きちんとやり切りたいなと思っています。我々が店舗を運営する上で心がけている「店舗はお客様にとってどうあるべきなんだろう」と考え続けることは、どの国にいっても必要だと思います。短期的にリターンがだせるかだけではなく、きちんとそこに向き合っていくというのが、アイスタイルグループとして小売をやっていることの意味だと思うので、地道にやっていきたいですね。

石川 ユニクロさんが日本で黄金モデルを確立して、アジアや欧米に展開されており、無印良品さんは今や中国が大きな柱になっています。私は「@cosme store」には、ユニクロさんや無印良品さんのような可能性があると思っています。海外にどんどん進出していくべきだと思いますね。

菅原 我々は中国では越境ECに参入していますが、店舗展開はできていないので、そこはいつかきちんとやっていきたいですね。

石川 越境ECは2つメリットがあると思っています。まずは短期的に売上が作れるということ。もうひとつはPRができるということです。越境ECでは、中国の方が購入してくれるということだけではなく、クチコミで情報が拡散されるという点が大きいです。越境ECがある一定の水準まで到達すれば、中国に出店するタイミングだと思いますね。その時には既に越境ECで宣伝が行われているので、最初からロケットスタートを切れる可能性があります。

菅原 遠藤さんは将来中国で店舗をオープンするとしたら、どんなお店を作りたいですか?

遠藤 コンセプトは日本と同じですね。ただ、中国はIT環境が大きく発達しているので、中国で店舗を展開するのであれば、お客様にとって面白いと感じていただけるよう、いろいろなところにIT技術を活用したお店を作っていきたいですね。中国でやるからには、それくらいのチャレンジをしていきたいです。

社外取締役から見たアイスタイル

菅原 石川さんは2017年9月よりアイスタイルの社外取締役に就任いただいて、1年間が過ぎようとしておりますが、アイスタイルについてどう感じておりますでしょうか?

石川 まず、いいなと思ったのが、CEOとCFOがちゃんとぶつかり合っているということ。役員同士でガバナンスが効いているというのはいいことだと思います。

菅原 しょっちゅう喧嘩してますからね(笑)

石川 あとは良い面でも悪い面でもあるのですが、キャッシュフロー経営を重視していると思うのでIT企業のわりに堅実(笑)。別の言い方をすれば、もっと加速してもいいのかなと思いましたね。一方で創業者である吉松さんを中心に「@cosme」をBeauty Platformへと変革するための改革を進めています。今後、国内から見ても海外から見ても全く新しい持続可能なビジネスモデルを生み出せる可能性があるのではないかと期待するとともに、楽しみにしています。

sugawara.jpgのサムネイル画像菅原 敬

株式会社アイスタイル 取締役 兼 CFO、シニアバイスプレジデント Global事業担当

グループ内で各種部門責任者や子会社代表取締役を務めた後、現在はCFOに加え、Global事業を統括する。当社に参画する前は、アクセンチュアやアーサー・D・リトルにおいて、10年間経営コンサルタントとして活躍。英国国立ブリストル大学にてMBA取得。



endo.jpgのサムネイル画像遠藤 宗 

株式会社アイスタイル シニアバイスプレジデント Beauty Service事業担当

(株)船井総合研究所、(株)たしろ薬品などを経て、「@cosme store」を運営する(株)コスメネクスト取締役に就任(現:代表取締役)。香港や台湾で「@cosme store」を運営するisyle Retail(Hong Kong)Co., Limitedの代表取締役も務めるほか、EC事業を担う(株)コスメ・コムの取締役や、海外への化粧品の輸出や卸売を手掛ける(株)アイスタイルトレーディングの取締役を務める。



ishikawa.jpgのサムネイル画像石川 康晴

株式会社ストライプインターナショナル 代表取締役社長 兼 CEO

株式会社アイスタイル 社外取締役

1995年に有限会社クロスカンパニー(現 株式会社ストライプインターナショナル)を設立し、代表取締役に就任。創業経営者として、アパレル領域において革新的な経営戦略で事業を拡大。2016年7月、優れた創業経営者を表彰する「年間優秀起業家賞」にて、起業家大賞受賞。2017年に当社社外取締役就任。

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